100万人の遙かなる時空の中で ~風青し~

{ 久方ノ月 }
歌:橘友雅(井上和彦)

眠れぬまま   御簾(みす)を開けて独り
久方の月を眺む
遙か白き面(おもて)   君が如し
狩衣の胸    ざわめく夜よ

幾度も   戯れの恋
重ねて   暮らした此の身なれど
こんなにも誰かを恋ふる時が来るとは

いとし君   夏の幻
此の腕に抱き難(かた)く
穢れなき   君を想わば
躊躇ひに   いざよふ月夜

 

花を手折ることは容易きこと
かりそめの恋であれば
されど手さへ触れで熱く想ふ
私らしくもないと笑ひて

此の世は   空蝉の世と
戯言   連ねて過ごした日々
慕わしき君に出逢ひて   心揺らぎぬ

いとし女人(ひと)   君がうなじに
咲かせたし   紅き花を
言問へば   恥じらふ如く
月は亦    雲に隠るる

 

白々と明けゆく空の
あの月は儚く溶けても
我が胸   恋しさは募りゆく

いとし君   夏の幻
此の腕に抱き難(かた)く
穢れなき   君を想わば
躊躇ひて

いとし女人(ひと)   君が心に
咲かせたし   紅き花を
言問へば   恥じらひ乍(なが)ら
名残り月   そっと微笑む

名残り月   そっと微笑む

  

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